Vampire's Moral
するとトシは、眉をしかめて考え出す。
トシは何が良いのかな~?
「……家」
「家っ!?」
「あぁ」
私は予想外の言葉に、思わずベッドの布団を蹴ってしまった。
たぶん私の目は、点になってるんじゃないかな。
トシには見えないんだけど。
「何で?」
「最初は音楽のイベントが良いって思ったんだけど……、ライブとか行くのは目が見えない状態だと怖いし、コンサートだと曲がよく分かんないし…。だったら家なら安全だし、気楽にノンビリ出来るかなって」
「まぁね…」
トシじゃなくても考えそうな事だけど、何て言うか…ちょっと寂しい。
だってお家デートなんて、目が見えても出来るじゃん。
金欠デートの代名詞、というか。
せっかくなんだから、目が見えない時にしか楽しめない事や、目が見えないこそ楽しめる事をしたかったんだけどな……。
そんな事をトシに伝えると、「目が見えないと、意外と何も出来ないぞ」って言われた。
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