Vampire's Moral





そんな事ないよ、と私は続ける。


「英語の教科書を私が音読して、トシがそれを繰り返すの。リピートアフターミー、ってね」


英語の先生が授業中に何回も繰り返す言葉を、私は冗談混じりに言ってみた。
するとトシは、本当に嫌そうに顔をしかめた。


「それ、本当に退屈そう…」

「二人でやれば、きっと楽しいよ。で、その後に単語の意味を確認したり、英文の日本語訳をしたりするの」

「発音だけじゃ、綴りも単語も、何も分かんねぇよ」




「それなら上野も休んでた間の英語の勉強も出来るし、俊秀だって苦手な英語を克服出来て良いと思うよ」


……気付いたら、能登君が病室に帰ってきていた。
腕に三本のペットボトルを抱えている。
目が見えないトシには分かんないかもだから、私はわざと声をかけた。


「あ、能登君おかえりー」

「…どうも」


入り口に背を向けて座っていたトシが、能登君を見るように後ろを向いた。





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