Vampire's Moral
「…分かったよ、行ってやる」
「いつも悪いな~」
言い方がまるで、じいちゃんみたいだ。
中学生でそんなに老けられたら、俺も困るし、上野も困るんじゃないかな。
そのまま電話を切ろうとして、俺は大事な事を思い出した。
「…で、オマエの目って、今はどうなってんの?」
「相変わらず。見えないし、真っ暗なまんま。…あ、でも耳が良く聞こえるようになった」
気楽そうに笑っているらしい俊秀。
本人は笑ってるけどさぁ…。
目に限らず、五感の一つが使えないと、他の感覚が優れる事があるらしい。
そんなに珍しくもなく、よくある事だそうだ。
俊秀の耳がよく聞こえるようになったのは、つまりそういう事だ。
上野には聞かせたくない副作用だね。
「あと検査してないから分かんないけど、最近は腹の調子が良いね。冷たい物を食っても腹壊さないし、動けないから運動不足なのに、腹が痛くならない」
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