Vampire's Moral





「…分かったよ、行ってやる」

「いつも悪いな~」


言い方がまるで、じいちゃんみたいだ。
中学生でそんなに老けられたら、俺も困るし、上野も困るんじゃないかな。

そのまま電話を切ろうとして、俺は大事な事を思い出した。


「…で、オマエの目って、今はどうなってんの?」

「相変わらず。見えないし、真っ暗なまんま。…あ、でも耳が良く聞こえるようになった」


気楽そうに笑っているらしい俊秀。
本人は笑ってるけどさぁ…。


目に限らず、五感の一つが使えないと、他の感覚が優れる事があるらしい。
そんなに珍しくもなく、よくある事だそうだ。

俊秀の耳がよく聞こえるようになったのは、つまりそういう事だ。
上野には聞かせたくない副作用だね。


「あと検査してないから分かんないけど、最近は腹の調子が良いね。冷たい物を食っても腹壊さないし、動けないから運動不足なのに、腹が痛くならない」





.
< 214 / 464 >

この作品をシェア

pagetop