Vampire's Moral





言われるままに、トシは強く目を瞑った。
…ってか、“良いと言うまで目を開けるな”みたいなの、どっかで聞いた事ある気が…。
何処で聞いた?


Desireちゃんはトシに近付き、その閉じられた両目に手をかざした。
それからDesireちゃんが全く動かないから、私が少し心配になってきた頃、今度は私の左手首が握られた。


「上野さんも、目を閉じて下さい」


私も目を閉じる。
Desireちゃんの、私の左手首を握る手に力が入る。
左手首からチクっと刺すような痛みと、体から何かが抜けて軽くなったような気がした。


「……はい。二人とも、目を開けても良いですよ」


私が目を開けると、少しだけ視界がぼやけたよう見えた。
…だけど、両目とも見えてる?
気が付くと、Desireちゃんが私の左手首に葉っぱみたいなのをあてて、クルクルと包帯を巻いている。

トシと目が合った。





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