Vampire's Moral
ああでもない、こうでもない、でも勿体無いとか考えていると、彼女は恐る恐る聞いてきた。
「…あの、三河先輩、塩冷麺、食べても良いですか?」
見ると、あたしの次の質問を待ってくれていたのか、割り箸すら割られてなかった。
いけない、いけない。せっかく美味しい塩冷麺を食べてもらおうと思ったのに。
適度な硬さで茹でた冷麺が、伸びてしまう。
「良いよ、良いよ。待たせてごめんね。どうぞごゆっくり」
「いただきます」
彼女はキチンと手を合わせてから、口と片手を使って割り箸を割り、冷麺をすすり始めた。
キチンと“いただきます”をするなんて、思ってたより礼儀正しいんだなぁ。
時折トマトジュースを飲みながら、冷麺を食べる見事な食べっぷりを眺めていると、気付いたら丼は空になっていた。
「お勘定、お願いします」
「750円です」
750円を確かに受け取り、今日の昼の営業の最後のお客さんを見送った。
「ありがとうございましたー!」
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