Vampire's Moral





赤く染まる、顔。
赤く染まる、制服のシャツ。

だけど、本人はそれに全く気付く様子は無く、静かに赤い涙みたいなものを、その目から流しながら。
静かに本を読み続けていた。

あまりにも静かで、あまりにも本人に違和感が感じられてなくて。
俺は何か、悪い白昼夢をみてるような気分になった。


「江梨子、江梨子!」

「……シ、トシ、トシってば!」


俺が江梨子を呼んでる筈なのに、何故か俺の方が江梨子に呼ばれていて、しかも肩を叩かれていて、俺は江梨子を見た。

江梨子は俺を心配そうな顔で覗き込んできていて、俺の額に手を当ててきた。


「トシ、さっきボーッとしてたよ。大丈夫なの? 夏バテにでもなったんじゃない?」


俺はそんなに体調悪くないし、いたって普通なんだけど。
江梨子の言う事がよく分かんない。


「俺は周りの人達を見てただけだよ。ほら、あそこにさっきの」






.
< 294 / 464 >

この作品をシェア

pagetop