Vampire's Moral





拓斗は、何処までも余裕そうに答えながら、だけど心配そうにウチの顔を覗き込んできた。
…だから、ウチの顔に何か付いてるの?
何か付いてるなら、早く教えて欲しいんだけど。



「何でウチは、苦しめられるくらいの過去を忘れてたの? トラウマくらいの過去なら、忘れる事なんて出来ないんじゃん?」

「そんなの知るか。俺が聞きたいよ」

「何でウチは、一度は忘れてた記憶に苦しめられてるの?」

「それが、流血が自分自身で決めたとはいえ、ずっと切なくて寂しくて苦しんでたから。だからカップルとか見て、妙に寂しくなってたんじゃない?」


まさしく拓斗の言うとおり。
実際、ウチ自身が縁を結んだ筈なのに、美濃と真亜咲ちゃんを見るのが、何でか辛かったのを覚えてる。


「……じゃあ、ウチが苦しんで、体調を崩す原因となった過去って、何?」


そして、これほどまでに長引いているのは、何故?





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