Vampire's Moral





「ごめんなさい…」


忘れてて、ごめん。
あの頃の仲間も、自分の想いも。


「何で謝るんだよ? 流血は悪くない」

「流血は頑張ってるよ。もう、逃げても良いと思うよ」


拓斗の慰めの声が聞こえた。
ウチを抱き締めるDesireの力が、強くなる。
頬や顎を、涙が流れる感覚があった。
赤く滲む視界の中で、拓斗とDesireが息を飲むのが分かる。


「元から流血が自身の過去を覚えてたなら、傷だらけになりながらも、吸血鬼として永遠を生きるしかなかったと思う。もしかしたら、トラウマを上手く乗り越えて、過去と上手く向き合いながら生きれたかもしれない」

「だけど何が原因なのか、ウチは過去の記憶を失ってしまった。それが無意識でも急に思い出したから、寂しい過去に苦しめられるようになった。……って事か」


拓斗の説明を引き継いで、自分の予想を話す。
それが正解だったのか、拓斗は頷いた。





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