Vampire's Moral





…なのに何で、こんなに寂しいんだろう?
忘れてすらいた寂しさに、こんなにも襲われるんだろう?

それだけ、兎だったウチにとって、その寂しさが苦しかったから?
その寂しい苦しさを背負ったまま、吸血鬼として永遠を生きなきゃいけないから?

分からない。ただ、肋骨らへんが痛い。
心臓も、太い剣で刺されたように痛かった。


「どうすれば良いか決めるのは、流血次第だと思うよ。流血はもう、事実を思い出したんだから」

「無理はしなくて良いと思うよ。逃げたって良い。泣いて楽になるなら、私が一緒に居るから」


拓斗とDesireは、本当に優しい。
Bloodyだってあんなに冷酷でも、上から抑えつけるように否定しない事は分かってる。

……でもDesire、“一緒に居る”と“そばに居る”は、禁句だと思う。
それこそ、カップル同士にしか届かない重みを持った言葉だから。
それを知ってたからこそ、兎だったウチは“三人で一緒に居る”事を望んだんだろうし、結局それを言葉にする事は無かったんじゃないかな。





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