Vampire's Moral





少し呆けた感じで、俺を見てくる因幡。
何だコイツ、まだ寝ぼけてそうだな。


「因幡。次の授業、物理科学室に移動なんだけど」

「え? あ、あぁ…」


ようやく事実に気付いたようで、慌てて荷物をまとめる因幡。
赤い染みのついたルーズリーフも、バタバタとまとめていく。

俺と因幡は、教室の照明を消して、戸締まりをしてから、物理科学室に向かった。
因幡の荷物には、赤い染みのついたルーズリーフも入っている。


「なぁ因幡。答えたくなければ、答えなくて良いんだけど」


何となくデリケートな問題なような気がして、俺はさりげなく“答えなくても良い”アピールをしながら質問した。


「何?」

「ルーズリーフの、その赤い染み、何?」


無表情のまま考え始めた因幡の光景は、もう見慣れた。
本当に、因幡は表情が薄いんだもん。
…ってか、考えなきゃいけないような、言いにくい内容だったら、答えなくても良いよ。





.
< 361 / 464 >

この作品をシェア

pagetop