Vampire's Moral
少し呆けた感じで、俺を見てくる因幡。
何だコイツ、まだ寝ぼけてそうだな。
「因幡。次の授業、物理科学室に移動なんだけど」
「え? あ、あぁ…」
ようやく事実に気付いたようで、慌てて荷物をまとめる因幡。
赤い染みのついたルーズリーフも、バタバタとまとめていく。
俺と因幡は、教室の照明を消して、戸締まりをしてから、物理科学室に向かった。
因幡の荷物には、赤い染みのついたルーズリーフも入っている。
「なぁ因幡。答えたくなければ、答えなくて良いんだけど」
何となくデリケートな問題なような気がして、俺はさりげなく“答えなくても良い”アピールをしながら質問した。
「何?」
「ルーズリーフの、その赤い染み、何?」
無表情のまま考え始めた因幡の光景は、もう見慣れた。
本当に、因幡は表情が薄いんだもん。
…ってか、考えなきゃいけないような、言いにくい内容だったら、答えなくても良いよ。
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