Vampire's Moral






「……吸血鬼の、突然変異?」

「は?」


急にボソッと答えるから、思わず聞き損ねた。


「だから、吸血鬼の、…突然変異?」

「だからって、何だよ? しかも、自分で言ってるのに疑問文ってどうよ?」


全くふざけた答えだな。
俺が思わず突っ込むと、因幡はパチパチと瞬きをして、その目尻が少しだけ下がった。
これは、表情が薄い因幡なりに、笑ってるんだと思う。
たぶん。

その表情を読み取ろうとして因幡の顔を覗き込むと、因幡の灰緑色の目が赤くなってるのが分かった。
顔に赤い涙のような跡も付いてるし、このまま物理科学室に行くのは、ちょっと面倒かも。


「因幡、ちょっと顔洗っていかない?」

「顔?」

「うん。顔に、赤い染みみたいなのも付いてるし」


因幡は持ってたルーズリーフを、正確にはルーズリーフの赤い染みを見た。


「分かった。洗ってく」

「じゃあ俺、先行ってる」





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