Vampire's Moral






「待って、行かないで」

「え?」


普通なら女子って、洗顔後の顔は見られたくないと思うんだけど…。


「ウチ、鏡に映る事が出来ないから、洗ってから赤い跡が落ちてるか、確認して欲しいんだけど」

「はい?」


鏡に映る事が出来ない? どういう事だ?
視力悪くて、鏡に映った物を確認出来ないんなら、分かるけど。


「ウチは吸血鬼として、鏡に映る事が出来ないの。一部の吸血鬼って、鏡に映らないんだ」

「…じゃあ、確認する」


俺がそう言うと、因幡は近くにあった水道で、さっそく顔を洗い始めた。
バシャバシャと勢い良く顔を洗う因幡。
コイツ、顔拭くモン持ってるのか?

……そういや、聞いた事あった気もする。
吸血鬼は鏡に映らない、とか何とか。



「ねぇ、落ちてる?」


因幡が濡れたままの顔を、俺に向けてきた。
顔は勿論、首に付いてた跡までが、綺麗に落ちていた。





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