Vampire's Moral





俺は因幡が安心出来るように、笑って親指を立てた。


「大丈夫。首の方に付いてた跡まで、バッチリ消えてるよ」

「良かった。ありがとう、美濃」


そう言って少しだけ目を細めた因幡は、制服のポケットから出したタオルチーフで、素早く顔と首を拭いた。
そのまま荷物を持って、再び物理科学室へと急ぐ。
授業の開始まで、あと一分くらいしかない。


俺は早足で歩く因幡の顔を、横からそっと覗き込んだ。
赤い目が、妙に気になる。

普通は泣いた時とかに目が赤くなる場合は、充血とかが原因だから、白目が赤くなると思うんだけど。
因幡の目が赤くなる時は、その灰緑色の瞳が赤くなるんだ。
まるで、カラーコンタクトを付け替えたように。


チャイムが鳴り終わると同時に、俺と因幡は物理科学室に滑り込む事が出来た。
これから理科総合の授業だし、俺は理科が嫌いじゃないけど、妙に授業に集中出来なかった。





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