Vampire's Moral





本当ならここで、トマトジュースを飲み込んだり、咽せたりして、何かの反応がある筈。
しかし何故か、流血の反応は無く、そのまま流血の口からトマトジュースが溢れ出た。
まるで流血の赤い涙のように、血のように、制服に赤い染みを作っていくトマトジュース。

拓斗はトマトジュースを机に置いて、椅子に座ったままの流血の背中をさすり始める。


「こないだは、これで意識戻ったんだけどな……」

「これで?」

「あぁ。トマトジュースが気道に入ったらしくて、咽せて、意識が戻った。俺でも怖かったよ。赤い目が瞬きせずに、赤い涙を流している様子は」


一度は冷静に戻った拓斗が、少しだけど再び慌て始めている。
そうか。流血がこないだ意識無くなった時は、そんなだったのか…。

しかし、流血の意識は、戻りそうにない。


「流血、大丈夫? 俺の声、聞こえる? 拓斗だよ」


拓斗が必死になって、流血の背中をさすり、声をかけるけど、流血は何も反応しない。





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