Vampire's Moral





何とか宿題を終わらせて、ココアを飲もうとカップみ見ると、中身が空っぽだった。
ココアのおかわりを作りに台所に行こうと思いついて、せっかくだから流血にも声をかける事にしたんだ。


「流血ー? 私は飲み物作りに台所に行くけど、流血はどうするー?」


流血の返事は、無い。
普通に植物辞典に集中してるのかと思って、私は流血の方を見る。


植物辞典を熱中して読んでるように見える流血は、下を向いてるから、表情が見えない。
……だけどそこで、ようやく私はページをめくる音がずっと聞こえてなかった事に気付いた。


「流血ー? 聞いてるの?」


何だか嫌な予感がして、もう一度声をかけてから、流血の顔を覗き込む。
そこで見たものに、私は思わず息をのんだ。
…そうか。たっくんが言ってた事は、こういう事か。




植物辞典を読むように下を向いている流血は、瞬きもしない赤い目から、赤い涙を流していた。





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