Vampire's Moral
「流血っ! 流血ってば!!」
私は流血の肩を掴んで、思いっきり揺さぶった。
植物辞典に、流血の赤い涙が落ちる。
流血が広げていた植物辞典のページには、ローズマリーが載っていた。
ローズマリーの花言葉は、“記憶”“追憶”、そして“思い出”と書いてある。
……しまった。花言葉か。思い付かなかった。
この言葉は確かに、流血の寂しくて悲しい過去を思い出すきっかけになる。
私は意識を戻した時に流血の視界に映らないように、植物辞典を閉じた。
流血のカップには、まだトマトジュースが残っていた。
流血の顔を何とか上を向かせて、強制的にトマトジュースを飲ませる。
流血の喉の動きから、流血がトマトジュースを飲み込むのが分かったけど、それでも流血の意識は戻らない。
ただ、流血が飲み物を飲み込んだ事から、反射神経とかみたいなのは大丈夫だと分かって、それは少し安心した。
…トマトジュースだったからかもだけど。
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