Vampire's Moral
「え? そりゃ、流血の名前を呼ぶDesireの声がしたから、何かと思ったんだよ。当たり前だろ」
「それなら良かった。意味無く無断で入ってきてたなら、たっくんでも許さないからね」
「それは、ありえないって。このタイミングで、それは論外」
良かった、そういう理由で入ってきて。
流血が倒れてるなら、流血に何かあったなら、返事なんて待ってる暇は無いもんね。
ってか、さすがたっくん。ちゃんとピンチに気付くなんて。本当に助かった。
「……ん………。あれ………?」
「流血!?」
たっくんと私が軽く言い争ってた所為か、流血が目を覚ました。
パチパチと瞬きしてから、頬を拳で拭う流血。
流血の流した赤い涙が、擦れて流血の拳に移る。
私は、流血が目を覚ました事に、凄く安心していた。
だから、流血が呟いたその言葉は、私には聞こえなかった。
「…また、泣いてたんだ…」
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