Vampire's Moral





「流血、具合はどう? 何か変なトコは無い?」

「……無いよ。大丈夫」

「良かった。……ほら、とりあえずコレ飲んで」


たっくんが、カップに入ったトマトジュースを、流血に差し出す。
流血は安心したように小さく溜め息を吐いてから、トマトジュースを本当に美味しそうにゴクゴクと飲んだ。


「……なぁ。やっぱりもう、逃げても良いんじゃね?」

「……え?」

「流血はもう、充分に苦しんだと思うよ。きっと、絶対に分かってくれてるって」


きっと、もう分かってくれてる。
流血はもう、充分に悲しんで、苦しんだ。
そもそも何で、流血が他の人の幸せを願って、死んでからもその事で苦しまなきゃいけないの?

そんな思いで、たっくんと私は声をかける。
それを聞いた流血は、寂しそうに、哀しそうに、少しだけ目尻を下げた。


「……二人とも、分かってくれて、ありがと」





.
< 434 / 464 >

この作品をシェア

pagetop