Vampire's Moral





「これ、貰って良いんですか?」

「今日の御礼。本当にありがとう」

「わーやった! ありがとうございます!! じゃ、先輩と一緒に、分けて食べますね!」


あの後、真亜咲ちゃんは本当に、家まで荷物を運んでくれた。
嬉しかったから板チョコを一枚あげたんだけど、予想以上に喜んでくれた。
あんな重い荷物を運んでくれたのに、板チョコ一枚であんなに喜んでくれるなんて、真亜咲ちゃんは何て良い子なんだ。
そんな真亜咲ちゃんだからこそ、美濃は惚れたんだろうけど。


……そう思ったら何か、またチクリと刺された感じがして、肋骨らへんが痛くなった。
呼吸が苦しくなる。
あの二人は本当に何も悪くないのに、どうしようもなく狡くて、どうしようもなく羨ましく感じる。

だって、ウチには、いない。
好きだった人も、一緒に居た人も、自分を犠牲にしてまで守りたかった人皆が、既に居なくなってしまった。
想いを認めても、楽にも何にもならなかった。





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