Vampire's Moral





一日に二回倒れて、学校を休んで、オマケに拓斗とBloodyまで休ませてしまった、あの日。
ウチは、一つだけ決めて、その為に、ホームセンターに買い物に行った。


ウチは、あと五回倒れたら、過去と未来と、寂しい想いから、逃げる事にした。
拓斗とBloodyとDesireに、殺してもらって。
さっきのが、その五回目。



人間って、過去を忘れる事の出来る、唯一の動物らしい。
吸血鬼も、たぶん忘れる事が出来ると思う。

だけど、ウチは絶対に、忘れる事が出来ない。
吸血鬼として永遠を生きる事の原因が、その寂しい想いなんだから。

吸血鬼は、死ぬ事が出来ない。
だから、どっちかと言えば、“消滅する”と言った方が近い。
死ぬ事が出来ないって事は、その“永遠”を痛感すれば痛感するほど、自分の過去と想いを思い出すって事で。
過去と想いを痛感すれば、自分が不死だって身に染みる。
まるで、メビウスの輪みたい。切れ目が無い。
死ぬ以外の、逃げ方が分からなかった。





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