Vampire's Moral





俺は立ち上がって、ニッコリ笑って因幡を見下ろした。




「因幡、ありがとう。その事実だけで、想う価値が見出せそうな気してきた」

「そりゃどうも」




因幡はいつもの無表情で俺を見上げて、トマトジュースを啜った。




…………午後の授業と部活の間は、因幡の言葉と真亜咲で頭がいっぱいだった。


現代文の問題で、先生に指名された気がするけど、よく覚えてない。

掃除中に誤って花瓶を割ったみたいだけど、よく覚えてない。


花瓶の片付けで部活に遅れて、校庭を余分に10周走った気がするけど、よく覚えてない。


せっかく因幡が色々と動いて励ましてくれたんだし、真亜咲にも人間として好意を持ってもらえてるようだから、俺の想いを伝えてみようと思う。

もし振られたとしても仕方無い。
真亜咲にだって、相手を選ぶ権利はある。
選り好みするなとか、そういう事は俺には言えない。





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