ラララ吉祥寺
「案外早く着きましたね。僕は車を停めて待ってます。
婦人科病棟は入り辛いですしね。
下に降りたらメールください。入口まで車回しますから」
木島さんはわたしをエントランスで降ろすと、そういい残し、駐車場に車を停めに行ってしまった。
確かに、男性に婦人科病棟は敷居が高いかもしれないな、とあっさり納得したわたしは、芽衣さんの待つ病棟へと急いだ。
「芽衣さん、お待たせしました」
病室に着くと、芽衣さんはもう帰り仕度をして待っていた。
「ゆっくり眠れましたか?」
そう問いかけたわたしに、芽衣さんは畳み掛けるように否定の言葉を返してきた
「眠れるわけ無いじゃないですか! 早く家に帰りたいです」
ベッド脇の椅子から立ち上がった芽衣さんは、部屋の入口に立つわたしを通り越して、ずんずんと廊下を歩いていってしまった。
「芽衣さん、精算は?」
芽衣さんの背を追いながら声をかけた。
「朝一番で済ませました」
その口調に緊張が見てとれた。
「木島さんが駐車場で待ってくれてるんですよ。
今呼びますから、ちょっと待って……」
わたしは待合に出たところで携帯を取り出した。