ラララ吉祥寺

「文子さん、男って酔っても女を抱けるって知ってました?」

「えっ? わ、わたしには経験ないけど……」

目の前の清楚な彼女が口にした言葉に、わたしは正直戸惑った。

「彼は確かに、わたしのことを、花岡芽衣だとわかって抱いたんです」

そう言い放った彼女の、握られた拳はほんの少し震えていた。

「わたしの名を呼んで、わたしを抱きしめて。

わたし……、やっと一人前の女として見てもらえたんだって、わたしの想いに応えてもらえたんだって、嬉しくて、嬉しくて……。


でも……」

「でも?」

「朝目覚めて、わたしが腕の中にいることに気づいた彼は、まるで汚い物を見るような蔑みの目でわたしを見たんです。

そのままわたしの身体を押しのけて……」

彼女の拳は、爪が食い込むほどに握られていた。

「わたしはその勢いでベッドから転げ落ちました。

見上げると、彼はすっかり青ざめて頭を抱えて蹲っていて。

わたし……、もうなにがなんだか訳がわからなくて……、そのまま逃げるように部屋を出て……」

「芽衣さん?」

彼女の拳には、いくつもの涙の跡が……。
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