ラララ吉祥寺
「わたし、あの日から初めて泣いたかも……、です。
できれば忘れたい。
忘れてしまえば彼への想いも消し去れるんじゃないか、ってずっと思ってて。
実際、少し前向きになれたと思ってたのに。
初めて交わって直ぐに子供ができちゃうなんて、どんだけ相性いいのか、って感じです」
望んでも授からない人も沢山いるのにね、と芽衣さんは小さく微笑んだ。
「だからわたし、この子を産みます。
父親のことは、今は考えないようにしたいんです。
勝手に産むことに抵抗が無い訳じゃないんですけど。
そんなこと考えてたら、前になんて進めないし。
今は、わたしの中で育っている、この子のことだけを考えてたいなって」
「でも……、いずれはわかることだよ?」
わたしには何故だか確信があった。
きっとその彼は芽衣さんの行方を捜しているんじゃないかって。
けれど、わたしが事態の好転を望んでいるのに反して、芽衣さんは何故かわたしの言葉を悪い方にとったようだ。