ラララ吉祥寺
「文子さん、楽しそうですね」
いつから木島さんはわたしの様子を眺めていたのだろう。
少し離れて、カートを背に、彼は嬉しそうに笑っていた。
「お陰さまで、なんとかぼちぼちやり過ごせそうです」
「それは良かった」
あんまり嬉しそうに木島さんが笑うから、わたしもつられて笑顔になる。
「文子さんだって、まだまだ望めば子供の一人や二人……」
「いえ、わたしはもう、恋愛はこりごりなんです」
「一度や二度の失敗で、大げさだなぁ」
「そういう木島さんだって……」
「まぁ、人のことはなんとでも言えますね、確かに。
僕も今更恋愛はおっくうだ」
そう言う木島さんは、少しだけ疲れて見えたのだけれど。
木島さんといるのはとても自然で落ち着くけれど、ドキドキワクワクの恋愛とはちょっと違うと思う。
わたし達には、こんなゆるい関係が丁度いいのかもしれない。