ラララ吉祥寺
「ちょっと寄り道してもいいですか?」
帰り道、車を走らせながら木島さんがわたしに聞いた。
「あ、はい、かまいませんよ」
「じゃ、お言葉に甘えて。いやなに、そんなに時間はとらせませんよ」
そう言って向かったのは、武蔵野市内の農家だった。
通りから少し奥まった空き地に車を停め、木島さんは車を降りた。
空き地の向こうには綺麗に畝に耕された畑と一つのビニールハウスが見えた。
どうやら彼はそのビニールハウスを目指しているらしい。
畑の畦を伝いながらハウスに到達した木島さんは、その中を覗き込んでいる。
どうやらハウスの中に人影を見つけたようだ。
「梅さん!」
木島さんが大きな声で中にいる誰かを呼んだ。