ラララ吉祥寺

まぁ、断る理由は何も無い。

「どうぞどうぞ。

美味しい採れたての野菜が食べれるなら、わたしも水遣りくらいはお手伝いしますよ」

わたしは笑って答えた。

「そりゃぁ心強いな。そうと決まれば、土を起こさないとな」

そう言って、木島さんは大きく伸びをした。

「じゃ、梅さん、また寄りますね」

文子さん、行きましょうか、とわたしを促し彼は帰りかけた。

「龍ちゃん、ちょいとお待ちよ」

そう木島さんを制した梅さんは、ハウス奥の棚から赤い大きな実をいくつかもぎ取ってビニール袋に詰めてくれた。

「これは水耕栽培のトマトでね。今実験中なんだよ。

味は結構いけるるんだが、水と肥料の加減で大きく成り過ぎちまうのが玉に瑕だよ」

試食してみておくれよ、と手渡された袋を覗くとはち切れんばかりに真っ赤に熟れたトマトが三つ。

触れたその手は高齢とは思えないくらいに力強かった。
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