ラララ吉祥寺
誕生
それから、我が下宿の日常に庭仕事が加わった。
庭の固くなった土を掘り起こして大きな石やゴミを取り除き堆肥を混ぜる。
基本の力仕事は木島さんが一人で済ませてしまったのだけれど。
梅さんから頂いてきた茄子とトマトの苗に加え、小松菜を直蒔きし、日除けにと二階ベランダの庇から網を張ってゴーヤとヘチマの弦を這わせることにした。
「ヘチマのタワシ、懐かしいでしょ」
そんな木島さんの言葉を思い浮かべ、わたしはせっせと水遣りをした。
毎日確実に成長する緑。
葉についた虫を丁寧に手でふき取り、伸びた弦を綺麗に絡ませる。
手をかけただけ応えてくれるその生命力にやる気を貰い。
花芽をつけた時には、感激のあまり涙まで浮かんでしまった。
今日もわたしは大きな麦藁帽子を被り、苗の根元に生えた雑草を抜いては土に混ぜる。
「あ、この茄子、そろそろいいかな」
エプロンのポケットから鋏を取り出し、朝の収穫をした。
大きくなり始めた実は、適当な時に収穫しないと、みるみる大きくなってしまうのだ。