ラララ吉祥寺
「文子さん、バスタオルを二枚ほどお願いします。
芽衣さんはこのまま運びますから」
事態は既に緊急の体を為しているようだ。
「は、はい!」
芽衣さんを抱き上げた木島さんの後を、タオルとバックを抱えて付いていった。
「文子さん、家に鍵かけてください」
「は、はい!」
わたしはただ彼の指示に従うだけだ。
「そこにタオルひいて」
わたしがひいたタオルの上に芽衣さんをそっと下ろすと、彼はわたしを一緒に後部座席にに座らせた。
「文子さん、芽衣さんを頼みますよ」
そして車は病院目指して出発した。
痛み間隔の無くなった芽衣さんは、もうずっと身体を強張らせて蹲っていた。
「芽衣さん、もうすぐ病院ですよ」
わたしの呼びかけに力なく頷いて、彼女はわたしに手を伸ばした。
わたしはその手をしっかりと握る。
「大丈夫、わたしも木島さんもついてますから!」
バックミラー越しに木島さんの真剣な目が映って見えた。