ラララ吉祥寺
<ガラッ……>
音をたてて玄関の扉が開いて、無言のまま木島さんが帰ってきた。
後ろ手で鍵を閉め、暗闇で靴を脱ぎ、そのまま階段を上がろうとこっちへ向かってくる。
手探りで階段の手すりを探り、最初の一段に足をかけようとした所で、そこに蹲るわたしに気が付いた。
「うわっ!
文子さん? どうしたんですか、こんなとこで座り込んで!」
わたしを踏みそうになって、前のめりで階段上段に手を付いた木島さんが驚いて大きな声をあげた。
「……」
わたしは何と答えたら良いかわからず無言のまま、膝を抱えていた。
「だいぶ無理したようですね」
そう聞こえたと思ったら、わたしの身体が宙に浮いた。