ラララ吉祥寺
「あ……」
抵抗する間もなく、わたしの身体は抱き上げられて彼の腕の中だった。
「ゆっくり眠るには癒しが必要なようだ」
そう判断したらしい木島さんは、わたしをそのまま居間に運んだ。
先日と同じように、壁を背にして胡坐をかくと、彼はその中にわたしを座らせた。
彼の膝の上で、後ろから抱きしめられて、わたしはそのまま目を瞑る。
それはとても自然な成り行きだったのだ。
「寒くないですか?」
「は……、い」
実際わたしは木島さんの体温で温められていて、寒さなんて感じなかったけれど。
彼はもしかしたら寒いのかもしれない。
「きじま、さんは?」
「この状況で寒いとかいったら、ばちが当たるでしょ」
僕だって一応男ですからね、と木島さんの腕に少しだけ力が入る。
「それって……」
わたしは思いがけない言葉に戸惑って、身を起こそうと身体を捩った。
「ほら、じっとして。
力を抜かないとリラックスできませんよ」
文子さんは臆病だなぁ、と木島さんが背中で笑う。
「大丈夫、何もしませんから安心して。僕は今、文子さんの安楽椅子ですから」
そう囁く声に安堵して、わたしは再び目を閉じた。