ラララ吉祥寺

「なんか、こうして歩いてると、仲良し夫婦みたいですね僕達」

木島さんが突拍子もないことを言い出した。

「えっ? いきなり夫婦ですか?」

「だって、この歳ですしね」

恋人にしては新鮮さが足りないでしょう、なんて呟くから、思わず横の彼を見上げてしまった。

確かに青年というには熟し過ぎた、彼の面立ち。

彼を見て、何故だかホッとするわたし。


わたしの中の恋愛は、高校二年の冬で止まったままなのだ。

それなりに月日は経って、わたし自身は年齢を重ねたというのに。

わたしを拒んだ彼の姿はいつまでたっても幼い十七歳のまま。

心に刻んだ傷は浅くなったけれど、恋の記憶にはギャップがあり過ぎて、わたしの心は過去に置き去られたままだった。


今、わたしの横には、同じように年齢を重ねた木島さんの姿があって。

だから、凄くホッとしたのかもしれない。


そう気付いたら、なんだか嬉しくなった。
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