ラララ吉祥寺

木島さんと手を繋いで歩く。

ただ黙々と。

でもちょっぴり口元を綻ばせながら。

五日市街道を横切り、弁天通りへ抜けた。

そのまま真っ直ぐ行けば井の頭公園池の外れに出る。

どうやら木島さんは、わたしのいつものお気に入りのルートを通っているようなのだ。

「木島さんもよく公園行かれるんですか?」

「ええ、たまに。弁財天参りにね。商売繁盛を願って」

あんまり効果はないようですが、と木島さんは笑う。

「わたしも……」

「知ってます。文子さんも、よく来てますよね。見かけたことありますよ」

「そ、そうなんですか?

なら、声かけてくれても……」

「見かけたのは、もっとずっと前ですから」

「えっ?」

「僕は以前から文子さんのこと、知っていましたよ。あの家に暮らす、ずっと前からね」

突然の告白に、わたしは驚いて声も出なかった。
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