ラララ吉祥寺
「だからあの日、別の意味でも凄く驚いて。絶対にあの家に住みたい、って思ったんです」
「古い家が好きって……」
「勿論それもありますよ。
でも、貴方という人がどんな人なのか、それを知りたいと思ったのもあります」
「わたしを?」
文子さんは鈍感だなぁ、と木島さんがまた笑う。
「僕は文子さんが好きなんです。気になってしかたない。いい歳したおじさんですが」
「木島さんが?」
「木島さんが、って傷つくなぁ」
「あ、御免なさい、そういう意味じゃ……」
「文子さんが恋愛に鈍感なのは承知の上です。
でも、僕決めました。
芽衣さんが退院するまでの一週間、どんどん迫りますから。覚悟してください」
力ずくで拒否られない限り止めませんから、と木島さんは不適に笑った。
「え、えっ……、そんなの困ります」
わたしに彼を拒む理由などないのだ。
彼が紳士的にわたしに接していてくれたことだけが救いだったのに。
「ま、こうやって手を繋いでる限りでは、困ってるようには感じないけど?」
木島さんはそう言いながら、更に指を絡め、わたしの手をしっかりと握り直した。