ラララ吉祥寺

「なんか、意外です。木島さんて和風のイメージだったから」

わたしは思ったことを素直に口にした。

「以前は商社に勤めていたって、言いませんでしたっけ?

商談で海外に行くことも多くて。ヨーロッパが主でしたけどね。

昔の僕はどちらかというと西洋かぶれで。

離婚して、会社を辞めてからかな。

僕が祖父母との生活にノスタルジーを感じて、和の生活に魅力を感じ始めたのは……」

「優しいお爺様とお婆様だったんですね。

木島さんの作る料理を見てるとそう思います」

「そうですね。愛情を注いで育ててもらいましたよ。

二人にはいくら感謝しても仕切れません」

「これから一杯、返していけばいいんじゃないですか?」

「そうできるといいのですが……。

二人は僕が大学生の時に相次いで亡くなって、もう会うことは叶わないんです」

「えっ……、ご、御免なさい!」

あんまりしみじみと木島さんが言うものだから、わたしはつい余計なことを言ってしまったようだ。
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