ラララ吉祥寺

「ただ、ぼうっと池を眺める姿が、逆に珍しくて。

だって、あんまり橋の途中で立ち止まる人いないでしょ。

まぁ、その時は見かけた、ってだけだったんですけどね」

あ、ガレットきましたよ、と木島さんは机についていた肘をどけた。

「食べながら話しましょう」

焼きたてが美味いですよ、と木島さんは起用にガレットをちぎって口に入れた。

「次見かけたのは、それから大分たってからでした。

貴方は池の傍のベンチで一人座って、鳩に餌をやっていた。

あ、もしかして以前見かけた娘かなって、気がついて。

餌を蒔いたはいいけれど、鳩が沢山集まりすぎて途方に暮れてたみたいで……」

そういえば、そんなことあったな、と思い出す。

「ただそれだけの出会いなんですけど。その光景が忘れられなくて。

だからほんとびっくりしたんですよ。

あの日、あの家に行って、貴方の顔を見た時」

三度目の正直だな、って思ったんですよね、単純に、と木島さんは笑った。

「興味と関心は愛着の始まりです。

僕は、初めから貴方に惹かれていたのかもしれないな」

にんじんのポタージュを口に運びながらそんな告白をする木島さん。

恥ずかしいというより、あまりに自然過ぎて、彼の言葉は美味しい食事と一緒にわたしを潤していった。
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