ラララ吉祥寺
第一夜

心もお腹も、すっかり満たされたわたしは上機嫌で木島さんの隣りを歩いていた。

向かう先は芽衣さんの入院する武蔵野赤十字病院の産科病棟だ。

丁度新生児室のカーテンが開いていたので、先にベビーにご対面。

ガラス越しにベビーを見ると、昨日よりは幾分赤みが取れて人間らしくなっていた。

「芽衣さん、名前、考えてあるのかな?」

ねぇ、と隣りの木島さんを見上げるとバッチリと目が合ってしまう。

「聞いてませんか? 男のなら俊一、女の子なら芽文。

もう大分前からそう聞いてますよ」

「えぇ~」

確かに、敢えて自分からは聞いたことはなかったけれど、木島さんが知っててわたしが知らないってどうなのよ、とちょっと気分は落ち込んだ。

「女の子なら、文子さんの字を一字貰いたい、って言ってましたから。

きっと言うのが恥ずかしかったんでしょう。

他意はないと思いますよ」

と、木島さんがわたしを慰めるように背中に手を当てた。

「さ、芽衣さんに会いにいきましょうか」

そう促されて歩き出す。

自然とその手はわたしの肩を抱いていた。
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