ラララ吉祥寺
「きゃぁ~、木島さん、なんですか、その格好!」
病室に入るなり、芽衣さんが奇声をあげた。
「らしくないです! 普通の人みたい!」
どうやら芽衣さんは木島さんの格好に先に目が行って、彼がわたしの肩を抱いている手には意識がいってないようだ。
「この方が目立たないんですよ」
まぁ、そうかもしれませんけど、なんて言いながら、それでも笑いを堪えられない様子の芽衣さん。
「でも、お二人揃って来てくださって嬉しいです」
昨日に引き続き、ありがとうございます、とベッドの上で芽衣さんは身体を折りたたむように頭を下げた。
「ところで……、赤ちゃんの名前、男の子だから俊一くん?」
だったよね、と木島さんが芽衣さんに尋ねた。
「えぇ、そうしようと思ってます。
お産が軽かったんで、退院、五日後の水曜に決まりました。
なので、その後直ぐ、出生届け出してこようと思ってます」
それなら間に合うと思うんで、と芽衣さんが答えた。
「わかった。じゃ、迎えにきがてら、そのまま市役所に直行しましょう」
帰り道沿いですからね、と木島さん。
「そうして頂けると助かります」
そんなやり取りの後、直ぐにまた授乳の時間が来るということで、わたし達は早々に病院を後にした。