ラララ吉祥寺
「サゼン!」
思わずわたしは声を上げた。
目の前の左膳の必死な姿に、わたしは我に返った。
現実に引き戻されたわたしは、驚く木島さんを尻目に、勢いソファから立ち上がるとそのまま窓辺へと駆け寄った。
「おかえり、サゼン」
窓を開けると、左膳は当然の如く、台所へと歩いていった。
お腹が減っているのは一目瞭然だ。
わたしはそそくさと彼の後を追い、餌箱に餌を入れる。
<ミャァ……>
左膳は満足気にひと鳴きすると餌を食べ始めた。
わたしはしゃがんだまま、じっとその姿を見つめていた。
「とんだ邪魔が入りましたね。どうやら彼に妬かれたらしい」
その声に驚いて振り向くと、同じようにしゃがんだ姿勢の木島さんがいた。
「ま、急いては仕事を損じる、とも言いますしね。
文子さんの気持ちは確かめたし、ゆっくり攻めさせてもらいますよ」
まだ時間はたっぷりありますから、そう言って彼はわたしを後ろから優しく抱きしめた。