ラララ吉祥寺
第二夜
「おはようございます」
気恥ずかしさも手伝っていつもより少し遅くれて起き出すと、既に木島さんは既に朝食を終え、新聞を読んでいた。
「おはよう、文子さん」
彼のいつもと同じ様子にほっとした。
「木島さんはいつも早起きですね」
「どうも日が昇ると目が覚めてしまって」
「えっ、そうなんですか?」
年寄り臭いですね、と木島さんが自嘲気味に笑って見せた。
「そうだ、文子さんは今日もお見舞いにいくんでしょ?」
「はい」
「残念ながら、今日は僕、仕入れの予定があるので病院へは行かれないんで。
芽衣さんに宜しく伝えてください」
「えっと、じゃ帰りは?」
「少し遠いので八時頃かな。
もし文子さんさえよければ、何処か外で食事しませんか?」
「八時ですか……」
今日は一緒に病院に行けないことが少し残念で、夜までの時間がとても長く遠く感じられてしまう。
わたしが答えに躊躇っていると、
「待ちきれなければ文子さんは何か先に食べてもいいですよ。
どちらにしても、外で待ち合わせしましょう。
僕は軽く食べて飲みますから、文子さんも付き合ってください」
じゃ、吉祥寺公園の前で八時に、と木島さんはわたしの返事を待たずにお弁当を手に出かけて行ってしまった。