ラララ吉祥寺

帰り際、店主の内藤さんから、今度是非うちのホームページのリニューアルにも手を貸して下さい、と頼まれたのだけれど。

頭が上手く回らず、しどろもどろになって、きちんと返事が出来ずに困ってしまった。

「今日は大分酔ってるみたいなんで、また日を改めて相談して貰った方がいいですね」

何なら僕を通しでも構いませんし、と木島さんが助け舟を出してくれて。

「なんだか、わたし、木島さんと一緒だと飲み過ぎちゃうみたいです」

わたしらしくない弱音を吐いてしまった。

「いいことじゃないですか。

僕は嬉しいな。

幸い、僕は酒に強いので、文子さんがたとえ潰れても、背負って帰るだけの余力はありますよ」

心配しないで、いくらでも飲んでください、なんて本当に嬉しそうに木島さんが笑うから。

わたしはそれだけで安心してしまって、彼の腕にもたれ目を瞑る。


フワフワ、フワフワ……。


こんな風に無防備に漂うことが、初体験に近いわたし。


木島さんに縋って、住宅街をそぞろ歩く。
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