ラララ吉祥寺

たかだか五分程度の道のりの筈なのに、なかなか家に辿り着かない。

どうやら彼は遠回りしているようだった。


「夜道を二人で歩くのって、いいですね」


なんて当然の如く呟いて見せて、彼はわたしを連れて住宅街をそぞろ歩く。

やっと見知った家並みが見えてきて、なんだかちょっとがっかりとしている自分に気付いて笑ってしまう。


わたし、木島さんに毒されてるなぁ、って。

あ、でも、昨日の続きが……


昨夜の自分が恥ずかしくなって、彼に縋る手に、つい力が篭ってしまう。

それに気付いたのか、木島さんの手がわたしの腕に優しく添えられた。

「さ、着きましたよ。疲れていませんか?

大分、歩かせてしまったからなぁ」

でも、酔いは冷めたでしょ、と笑う木島さん。

見上げたわたしの額に小さなキスを落として、彼はわたしの腕を解くと、今度は手をとって歩き出した。

と、その時だった。


「おい、君、ちょっと!」


明らかに怒りを含んだ低い男性の声が、木島さんを呼び止めたのは。
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