ラララ吉祥寺

木島さんは玄関の上がり框に男を座らせ、靴を脱がせた。

そのまま引きずるように居間へと運ぶ。

ソファに座らせてところで、木島さんは彼の頬を何度が叩いた。


「おい、花岡、起きろ!」


その口調は、まるで彼がこの男を以前から知っているように聞こえた。

驚いて固まるわたしを見て、木島さんはいつもとは違う神妙な顔付きで言った。


「彼は、花岡俊夫。

芽衣さんの兄ですよ。

そして、彼は、僕の昔の部下でもある」

といっても、彼が入社した時の補佐役だっただけですけどね、と木島さんが呟やくのを聞いて。

わたしはごくりと生唾を飲み込んだ。



ってことは……、彼が芽衣さんの赤ちゃんの父親?
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