ラララ吉祥寺
「芽衣は、突然家を飛び出して。
まぁ、仕事は続けていたようなので、さほど心配はしていなかったんですが。
やっと居場所を突き止めて訪ねてみると、お腹が大きいじゃないですか。
兄の僕に内緒で結婚したのかと思ったら、そうでもないようだし。
今時は夫婦別姓で事実婚の場合も無きにしも非ずですし。
折を見て問い詰めようとは思っていたのですが、なかなか機会が得られず……」
花岡さんは、落ち着いた様子で淡々と事情を口にしたのだけれど。
「お前、何言ってんだ?
気になるなら、直ぐにでも訪ねてくればいいじゃないか。
それを、こっそり見張ってるなんて、変だぞ?」
木島さんに痛いところを突かれ、彼は口篭ってしまった。
「なんか事情がありそうだな」
そう頷くと、彼は突然わたしに矛先を変えた。
「文子さん、何か知ってるでしょう?」
明らかに挙動不審なわたし。
龍に睨まれて、身動き出来ずに固まった。
「話して楽になりなさい」
木島さんは、あくまで冷静に、わたしの話を促した。