ラララ吉祥寺


「僕は……」


口ごもる彼に木島さんは間髪居れず、


「バカヤロウ!!」


大きな声で怒鳴りつけた。

その瞬間、小次郎が驚いて尻尾を震わせた。

いつもは穏やかで笑った顔しか見たことがない彼の、初めての怒りに触れて、わたしの身体も震えていた。


「この後に及んで、何を戸惑うことがあるんだ!

お前がここに居ることが答えじゃないのか!」

「貴方に何がわかるっていうんですかっ!

僕がこの十数年、どんな気持ちで彼女と暮らしてきたと思ってるんですかっ!」


木島さんの恫喝にも動じずに、花岡さんは凛として彼に立ち向かっていたのだけれど。

わたしには、その姿が頑なに自分の理屈を通そうと無理をしているように見えて痛々しかった。


彼の膝の上で握り締めた拳に、更に力が籠められた。
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