ラララ吉祥寺
それでもわたしは、何処か割り切れない気持ちで一杯だった。
芽衣さんがわたしの前で見せた涙の重さと、花岡さんが見せた煮え切らない態度。
そもそも彼は、子供のことをどう思っているのだろう?
芽衣さんは恐らく彼の名前の一字をとって、息子を俊一と名付けたのだろうと、花岡俊夫と名乗る彼女の兄の名を聞いて真っ先にそう思ったのだ。
それほどまでに一途に思われるだけの価値が、あの男にあるのだろうか?
彼が何よりも芽衣さんを大切だと選んで戻って来たとして、それで芽衣さんは幸せになれるのだろうか?
割り切れない気持ちは、そのまま花岡さんに対する不信感へと入れ代わる。
戻ってくれば良い、というものでもないだろう。
「文子さん、なんか納得できないって顔ですね」
力が入った額に親指を這わせ、木島さんがわたしに聞いてきた。
わたしは相当厳しい顔をしていたようだ。