ラララ吉祥寺
「だって……、あの煮え切らない態度、ちょっとムカつきました。
芽衣さんはあんなに一途に想っているのに、あの人は世間体とか自分の立場が最優先みたいで……」
「それはどうかな」
わたしは木島さんが同意してくれるとばかり思っていたので、その言葉に少し戸惑った。
「恐らく、彼にはもう世間体を気にする心の余裕はないですよ。
もう何日も着替えをしていないようにも見えました。
芽衣さんの姿がここ数日見えないことが、彼をよっぽど追い詰めたんでしょう。
あんな必死な姿を他人に見せるなんて、よっぽどですよ。
何ヶ月も彼女を傍から見守るだけで、何もしてこなかった自分を、今更ですが、責めているのかもしれません」
誤解しないでやってください、と木島さんは言った。
「彼はもともと、誠実で優しい奴です。
会社に居る時も、出世欲より周りを気遣うタイプでしたしね」
わたしは木島さんの激しい言動に目を奪われて、肝心なところを見落としていたのかもしれない。
「それに……、あの二人が過ごしてきた長い年月を、第三者である我々が理解できる筈もないじゃないですか」
そう言われてしまえば返す言葉もない。
わたしが口を挟む余地など、もとからありはしないのかもしれない。