ラララ吉祥寺
「わたしは世の中から隠れてひっそり生き延びてきた人間ですよ。
今の生活を死ぬまで続けられることが唯一の望みだった人間ですよ。
芽衣さんが子供を産むことに嫉妬さえ感じて。
木島さんのことだって……」
いつの間にか必死に彼の目を自分に戻そうと躍起になってしゃべっていた。
愚問でした、もういいですよ……、と木島さんがわたしの言葉の先をその手で封じてくれて。
「今夜はもう遅い。大人しく寝ましょうか」
そう言って立ち上がった木島さんが、遠く離れていくようで不安になった。
「一緒に……、一緒にいたいです……」
思わず気持ちが口からこぼれてしまう。
縋るような目で見上げたわたしに、木島さんが少しだけ驚いた表情を見せた。
「貴方はほんとに……」
僕を驚かすのが好きだな……、と呟いた木島さんがわたしにそっと手を差し伸べて。
彼はわたしを伴って二階へ上がり、自室へ招き入れてくれたのだった。