ラララ吉祥寺
男と女
目覚めると、彼の腕の中にいた。
四畳半の板の間には、何故か隅に畳が三畳ほど敷かれていて。
木島さんはそこに布団を敷いて寝ていた。
昨夜、ジーパンとセーターを脱ぎ、彼の布団に潜り込んだわたしを、彼は苦笑しながら眺めて言った。
「貴方が僕に挑戦的になる必要なんてないでしょ」
僕はそういう心の隙間につけ込むようなことはしたくありません、彼はわたしの不安定な気持ちを見透かして、そうきっぱり言ったのだ。
彼の言葉を、布団の中で丸まって背中で受け止め、わたしは固まっていた。
「僕はね、文子さん、貴方といるととても穏やかな気持ちになれるんです。
貴方の持つ強さも弱さも、貴方の一部だと思うし。
愚かささえも、笑って受け止められる。
なんでだと思いますか?」
わたしは縋るような気持ちで、そうっと片手を後ろに差し出した。
その手を木島さんが受け止めてくれたことに安堵して、わたしはその手を握り返す。
「それは……、貴方を愛しく想っているからですよ。
不思議です。
こんな穏やかな気持ちで、人を好きになることが出来るなんて……」
彼はそう言って、わたしを背中から抱きしめて眠ったのだ。