ラララ吉祥寺
夢は見なかった。
どうやらわたしはすっかり安心して、深い眠りに落ちたようだ。
まるで一つの身体のように、わたしの背中と彼の胸がピタリと重なりあっていた。
寝ている間は気付かなかった彼の温もりが、目覚めた今は気恥ずかしくて。
わたしはその腕の中から逃げ出そうと、身体を捩って密かにもがいていた。
少し動く度、何故だかわたしを抱く彼の腕の力が強くなるような気がして。
三度目の正直でそれは確信に変わった。
「木島さん、放して下さい」
「いやだね、何で逃げる必要があるの?」
はっきりとした口調で言い返されて、わたしはちょっとムッとした。
やっぱり木島さんも目覚めていたのだ。